農業収入ゼロの百姓が気ままに綴る日々
by shimazuku
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
以前の記事
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
more...
最新の記事
雨読メモ27/18 『鉄道員..
at 2018-11-15 09:26
柴木川渓谷を歩く 2018/..
at 2018-11-11 22:12
雨読メモ26/18 『原民喜..
at 2018-10-29 16:00
雨読メモ25/18 『斗南藩..
at 2018-10-13 15:00
雨読メモ24/18 『昭和の..
at 2018-10-10 09:31
記事ランキング
フォロー中のブログ
日替わり定食
山に暮らせば
隣のカモミール ~妻ラン...
最新のコメント
よう言った! パチパチ!
by toshi at 20:01
同感!
by toshi at 10:21
山口のタクシー会社さんの..
by umiko0 at 07:57
umikoOさん、コメン..
by shimazuku at 19:13
幼いころのタンポポと言え..
by umiko0 at 10:38
涙が出そうなくらい残念な..
by yumeko at 11:10
ぷっ♪ ま、メグ・..
by umiko0 at 13:52
高すぎる 信じられん ..
by anglimala at 21:44
なんでもプレオープンの入..
by 本当の噂話 at 23:30
はじめまして、zakky..
by zakky at 07:24
メモ帳
ライフログ
検索
ファン
画像一覧

雨読メモ 13/17 『戦争がつくった現代の食卓』 2017/12/17

目覚めればまた雪。

年末の慌ただしい時期はワイフと顔を合わせないほうがよい。いつ、どんな用事を言いつけられるかわからないからだ。こういう時は自分の部屋に避難して静かに読書するのが一番。

かれこれ10日かかって、実に読みづらい翻訳ものを読み終えた。

         ***********

『戦争がつくった現代の食卓』

(アナスタシア・サルセド著・田沢恭子訳・白揚社・7月刊)

d0165740_10114867.jpg

1960年代前半まで鶏肉は柏肉と呼び、独特の風味があった。柏肉になる鶏は大抵が卵を産み終えた老鶏だった。我が家でも年末になると鶏を処分して正月の料理に使った。しかし、農家の庭先から鶏が姿を消してほどなく、スーパーマーケットに食肉専用の鶏・ブロイラーが並ぶようになった。

ブロイラーは、ふにゃふにゃで水っぽくて、とても柏肉とは呼べない。もう40歳を超えた息子たちも、むろん孫たちも、僕が子供のころ食べた柏肉のコクのある味を知らない。

あとで知ったのだが、ブロイラーは第二次大戦中に戦線に大量の肉を送るため米国で開発された。雛からわずか60日で肉になるのだという。食肉養鶏は1960年代後半に日本でも広がり、ウインドレス養鶏と呼ばれ現在に至る。

窓のない暗い鶏舎に閉じ込めて餌を四六時中食べさせ、一定の成長を遂げると肉に加工される。加工場を見学したことがある。フックで脚を逆さづりにされた鶏が、まるで工場のような流れ作業で解体される姿に唖然とした。

そんなことを思い出しながら本書を読み始めて、認識不足を思い知った。

米陸軍には兵士の糧食の研究開発を司るネイティック研究所という食品業界に絶大な影響力を持つ機関がある。自ら「フードライター界の悪女」と名乗る著者は、そこへ乗り込んだ。つまり、史上最強を誇る米軍のキッチンの過去、現在を根掘り葉掘り調べたのである。

古くはローマ帝国、ナポレオン軍、そして第一次・第二次大戦、原爆・宇宙開発と食、ベトナム、中東…。戦場の兵士のために必要な糧食の条件は、かさ張らず軽い、酷暑・極寒の戦場でも味が変わらない、いつまでも保存可能で闘うための体力を維持できる、補給・補充が容易―など過酷なものだった。

乾パン、缶詰といった古典的な兵員糧食を経て、第二次大戦は米軍にとって総数1100万人を超える兵員の糧食をどう確保するかという、食料戦争でもあった。そこで登場したのがネイティック。この機関は戦場の要請に応えつつ、本土で教育を受ける新兵の食べ物に至るまで対応した。

そのためにネイティックは大学研究機関、食品会社、さらには本土で製造し港まで大量にしかも短時間で輸送・船積みできる輸送荷役会社まで、ありとあらゆる組織のノウハウを総動員した。

そこから、猛暑の前線で兵士が求める溶けないチョコレート、水を加えるだけで口にできる糧食、食べるまで変質しない容器・包装材、積み下ろしが容易なコンテナーなどが開発された。

インスタントコーヒー、エナジーバー(例えばカロリーメイトのような携行栄養食品)、各種フリーズドライ食品、非加熱殺菌ジュース、レーダー装置に由来する電子レンジ、常温で変質しないペットフード…。ネイティックに起源をもつ食品や家電を数え上げるときりがない。

ただし本書は、著者の遠回しな皮肉や、笑うに笑えないジョークが頻繁に出てきて、読みにくいことこの上ない。読者にとっても「悪女」である。

巻末で「フードライター界の悪女」はスーパーマーケットへ向かう。そこで軍に由来する商品を次々とカートに入れて行く。そしてこう結論づける。「いまもし軍とかかわりのある食品をすべてスーパーマーケットから撤去したら、棚の半分は空っぽになってしまうだろう」と。

ネイティックと米国の食卓はかくのごとく深くつながっている。日本のスーパーの食品棚も恐らくアメリカの現状と大差ないだろう。そう思うと、アメリカ流プラグマティズムの極致を見せられたような複雑な気分になった。軍需産業というのは何もミサイルや戦車、軍艦をつくる企業ばかりではないのだ。


[PR]
by shimazuku | 2017-12-17 10:14 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://shimazuku.exblog.jp/tb/26241613
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。