忘れ得ぬ人 2017/12/09
師走になると思い出す人がいる。ハワイ・カウアイ島で会った日系人二世のアイリーン・ウメノ・ハラダさん。訪ねた時に86歳だったから、ご健在なら100歳を超えている。
1941年12月8日(ハワイ時間7日)、「真珠湾」が彼女の人生を大きく変えた。日本海軍の攻撃機がニイハウ島に不時着し、夫がパイロットを救出しようとして騒ぎに巻き込まれ、パイロットとともに亡くなった。
彼女は反逆罪の容疑で逮捕され、3人の子供と引き離される。他の日系人と収容所に暮らし、44年にようやく解放されカウアイ島に戻った。戦後ミシン一つで生計を立て、子供を育て上げた。
周防大島町屋代生まれの父、防府市三田尻生まれの母の間に生まれた彼女は、子供たちが米本土で独立したのを見届け、1984年にひっそりと父母の故郷を訪ねた。夫と運命を共にしたパイロット・西開地重徳一等飛行兵曹の故郷・今治市の墓参を済ませ、その足で四国八十八か所を歩き通した。
細身の穏やかな語り口の老女だった。5人の孫に恵まれ、亡き夫と自らの「戦争」を老女はどう語り継いだか。日米開戦から76年、12月12日生まれの僕も、もうすぐ76歳。