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農業収入ゼロの百姓が気ままに綴る日々
by shimazuku
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本との出合い 2013/06/11

 書店に注文していた本が、1ヵ月かかってようやく手に入った。アマゾンを利用すれば速いのだろうが、未知の本と出合うのを待つのもまた楽しいものだ。
本との出合い 2013/06/11_d0165740_1342551.jpg
 4月にテレビ番組で著者を知り、大型連休明けに発注したのは、埴沙萠(はに・しゃぼう)著『植物記』(福音館書店・1993年刊)という本。20年前に出ていて、僕が手にしたのはなんと第15刷。図鑑でもなく、写真集でもなく、図書分類上は児童書だという。その証拠に漢字にはすべてルビがふってある。

 巻頭に次のように書いてある。「この本には珍しい写真も、色鮮やかな写真も出てこない。日ごろ道端や庭で見て知っているありふれた植物ばかりだ。しかしそんな身近な植物にも、生命のすばらしい美しさがある。あなたはきっと、新鮮な目で見直してくれると思う」(要旨)。著者のこの言葉に偽りはない。まさにページをめくるごとに新鮮な驚き、感動があふれている。

 4月から始まって翌年3月まで、月ごとにカレンダーがついていて、写真と共に開花、農作業の始まり、鳥や昆虫の行動などが記録してある。さらにその先に驚きが続く。

 たとえば今の季節に合わせて6月を見ると--。スミレの種がはじけてとぶ様子が時間を追って撮影されている。「スミレの花はほとんど実を結ばない。花は咲かないが実を結ぶ閉鎖花というものを出して種をとばす」と書いてある。そうだったのかと不明を恥じ、散歩の途中でしゃがみこんでスミレを見た。写真にあるように実をとばしたあとの3枚羽根の風車のような莢(さや)が残っていた。

 種が詰まった実(莢)が開き始めた午前10時から10分おきに撮影された写真は、1つの莢に3列に並んで詰まった小さな実が中央列からはじけて1つ残らずとび出す正午までの2時間が18枚の写真に記録されている。こうして動かぬ証拠を並べられると、ぐうの音もでない。

 同じ6月には「睡眠」というタイトルで昼と夜の植物の葉の写真がある。ネムノキやハブソウが夜になると葉を閉じるのは知っていたが、カタバミ、ダイズ、ソバ、アサガオの睡眠の姿を見せられると、ひところテレビで流行した「トリビアの泉」などものの数ではない。

 ヒマワリ(向日葵)の花は太陽に合わせて動くという誤解、受精を終えたピーナッツが土に潜り込んで実をつける連続写真、キノコの胞子が飛び出す瞬間、朝咲いて半日で花びらをすべて落とすオオイヌノフグリ・・・。

 大分県を撮影舞台にしたこの本に20年もの間、出合わずに生きてきた自分がくやしい。いま群馬県に住んで撮影を続けているという81歳。四季の移ろいを追い、地べたに這いつくばって小さな植物を撮る。この人は一体いつ眠っているのだろう。いつ植物と離れて暮らしているのだろう。

 ページをめくりながら、小学生のころ兄が買ってくれた『ファーブルの昆虫記』の興奮を思い出した。でも僕なんか、山里に暮らしていながら何も見ていないに等しい。

 埴さん、80歳でエベレスト山頂に立った三浦さんに負けず、いつまでも写真を撮り続けてください。感動をありがとう。

 
by shimazuku | 2013-06-11 13:45 | Trackback | Comments(0)