農業収入ゼロの百姓が気ままに綴る日々
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読書ノート6 2013/01/06

 孫たちの「帰省の嵐」が過ぎ去って、楽しみにしていた正月読書に浸った。

 読んだのは『TATARA』(松本 薫著・2010年10月今井書店刊・1762円+税)という横文字タイトルの一風変わった本。フィクションの体裁をとってはいるが、中国山地で栄えた鑪(たたら)製鉄の終末期、鳥取県西部・日野川上流域を舞台に繰り広げられた叙事詩である。
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 主人公「りん」は、医師だった父亡きあと、たたら製鉄を生業とする根雨(ねう)の近藤家(書中では黒井田家)へ15歳で奉公に上がる。「賢く、強い女人であれ」という父の遺訓を胸に、当主一族の信頼を得て成長する姿がすがすがしい。かなわぬ恋、有能な手代との結婚、出産目前に遭遇した悲劇、思いを寄せた職人の子を養子として育て上げ、日露戦争で失う悲惨・・・。

 この縦軸に対し、たたら製鉄の衰亡と格闘する近藤家の歴代当主とその家族がからみあって、幕末、明治、大正期の歴史ドラマが展開する。「富国強兵 殖産興業」を掲げる明治政府の強引な政策を、中国山地という一地域から逆照射した物語と言い換えてよいかもしれない。

 この本の刊行をプロモートしたのは「伯耆国たたら顕彰会」という2010年に設立された団体である。島根県・斐伊川上流域の奥出雲に隣接しながら、たたらの歴史検証では大きく後れをとった。しかし、最近の活動は目覚ましい。「たたらの楽校(がっこう)」と名付けた資料館を2か所に開設したり、シンポジウムを開いたり、県教委の支援でたたら遺跡の発掘調査を進めるなど、埋もれた歴史解明が急速に進んでいる。

 「鳥取県西部地震」(2000年10月)で損害を受けた近藤家は、10万点に及ぶ資料を県立公文書館に預けている。そこでの整理が進めば、新たな事実が発見されるかもしれない。

 フィクションは苦手な僕も、涙をふきながら読み終えた。
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by shimazuku | 2013-01-06 13:13 | 雨読ノート | Trackback | Comments(0)
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