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農業収入ゼロの百姓が気ままに綴る日々
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外交官・寺崎英成 2012/11/22

 僕の頭の中に一人の外交官が時折浮かぶ。因縁とでもいうのだろうか。名前は寺崎英成。そう、『昭和天皇独白録』を残した人である。

 京都での学生時代、時代劇映画のアルバイトがけっこうあった。撮影セットをつくったり壊したり、エキストラをしたり・・・。1961年のある日、学生服、角帽着用のことという条件つきの、いつもとは違う珍しいエキストラ募集があった。当時は学生服に角帽が日常の服装だったから、要するに普段着である。集合場所は向日町の競馬場跡。

 行ってみると巨大なオープンセットがあって、どうもアメリカ映画の撮影らしい。どこかで見たことがある白人の女優。そうだ「ジャイアンツ」に出ていたキャロル・ベイカーだ。好奇心に駆られて関係者に根掘り葉掘り聞くと「太陽にかける橋」という映画ロケで、彼女の役は日本人外交官と結婚したアメリカ女性だという。

 日本人外交官の妻グエン・寺崎が第二次大戦中にたどった数奇な運命を描いた同名の自伝の映画化だった。翌年、封切りになって見に行った。米軍の空襲で逃げ惑う市民の一人として、学生服姿の僕もほんの一瞬だけ出演していた。主役はむろん防空頭巾をかぶったキャロル・ベイカー。

 大学を出て記者になって原爆問題を取材していた1970年代。元NHK記者でノンフィクション作家に転身して注目されていた柳田国男さんが「空白の天気図」に続く作品として世に問うたのが「マリコ」。読み進むうち、日米開戦前、ワシントン駐在の寺崎英成が、外務省の兄(アメリカ局長?)とやりとりするときに使った暗号名が、娘の名前マリコだったと知る。

 あの映画の主人公・グエンの娘が暗号名に使われていたとは・・・。柳田さんはどうしてそういう秘話を知ったのだろうかと、卓越した着眼に脱帽した。僕は柳田さんと面識はないが、1960年代、広島放送局記者として原爆問題を取材し、奥さんは広島の人だと先輩記者から聞いた。「空白の天気図」は広島時代の取材が元になっている。

 それからさらに年を経た1990年代、「昭和天皇独白録」が世に出た。本を手にして初めて、GHQ総司令官マックアーサーと昭和天皇の会見で通訳を務めたのが寺崎英成だったと知る。そうだったのか、あの歴史的会見の通訳を務めたのかと、また新しい事実に遭遇して寺崎への認識を改めた。

 寺崎夫妻は既に亡く、アメリカ在住のマリコさんも健在なら81歳のはずだ。一面識もない外交官一家が、あのエキストラ出演のおかげで、僕にとって身近な人であり続ける。

 
by shimazuku | 2012-11-22 14:13 | Trackback | Comments(0)