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農業収入ゼロの百姓が気ままに綴る日々
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『川の駅』川本の凋落

2010/10/20(水)
 9月以降、島根県邑智郡川本町を訪ねたのは今日で5度目。お寺の所在地を確認するため役場に地図を買いに立ち寄ったのが最初。次いで町内のお寺を3回に分けて回り、美郷町の川本に近いお寺を訪ね、そして今日である。
 2度目の訪問の時、弁当を買おうとコンビニを探したが、ここにはコンビニがない。食堂も営業している様子がない。やむなく因原まで引き返して午後2時ごろやっと昼食にありついた。以後、川本の町に入る前には必ず弁当を買うことにした。
 この町は過去、数えきれないくらい取材で訪れている。しかし、今回の川本は印象がまるで違う。とにかく人通りが少ない、狭い町、狭い道なのに信号待ちはたいてい先頭。つまり車の往来も少ないのだ。

 川本は江の川の舟運が盛んだった昭和初期まで邑智郡内の人が集まる、いわば「川の駅」だった。三江線が全通したのが昭和40年代後半。しかしこのときすでに「過疎」が進んでいた。そして1980年代、中国地方が高速道路時代に入って、川本は取り残された。
 まず川本から「支店」機能が消え始めた。法務局、営林署、NTT、中国電力、さらに最近は県の出先も統廃合が進んで、ここに残るのは土木と農林だけ。いま警察署、高校の存続にも黄色信号が点滅している。

 平成の大合併で川本の凋落は決定的となった。石見町、瑞穂町、羽須美村は早々と「邑南町」になり、桜江町は江津市と合併、残った川本と邑智町、大和村が合併するはずだったが、川本が江津市への合併に動いたり、役場を川本に置くよう主張したりして、邑智、大和からも「いい加減にしてくれ」と愛想づかしされて美郷町が誕生し、ついに合併から取り残された。そして島根県内でも数少ない「未合併」町として残った。

 「川の駅」であったがゆえに過去の栄光を捨てきれず、衰退の道を歩んでいる町は川本町だけではない。中国地方ではたとえば斐伊川流域の旧大原郡木次町(現雲南市)、広島県の太田川上流の旧山県郡加計町(現安芸太田町)がある。木次町は川をはさんで隣接する三刀屋町に流通機能が移り、加計町は中国自動車道の戸河内インター付近に商業集積が進んでいる。
 この3つの町に共通するのは、かつて「郡都」であったというプライド。そのプライドのゆえに加計町は山県郡7町の合併構想を拒否した。川本町は先にふれたように合併問題で孤立してしまった。「川」から「鉄道」へ、そして「高速道」と物流の動脈は変わった。3つの町とも「高速道」から取り残されて現在がある。プライドだけで町を支えることはできない。

 いま、川本で唯一といってもよい「輝いている」店がある。「過疎と戦うインターネット古書店」と銘打ってIターンの若い人たちが忙しく働く「紙屋古書店」である。有限会社エコカレッジ社長の尾野弘明さんが率いるユニークな店である。今度川本を訪ねて、町の再生についてじっくり話を聞いてみよう。
by shimazuku | 2010-10-20 22:54 | 中国山地 | Trackback | Comments(0)