雨読メモ 02/18『食と日本人の知恵』2018/01/11
きのう10日、雪がどっさり降った。40センチ。何年ぶりだろう。日が暮れてやっと除雪車が通った。
今朝は気温マイナス2度。ストーブたいても部屋がちっとも暖まらない。窓の外はモノトーンの世界。
とりとめもなく買ったままの本たちが、「いつ読んでくれるんだい?」と催促している。
雨読メモ02/18 『食と日本人の知恵』
(小泉武夫著・岩波現代文庫・2002年刊)
著者のことは日経新聞の「食あれば楽あり」の連載コラムで知っていたが、著書を開くのは初めて。本書も、産経新聞に連載されたコラムがもとになっていて、なぜか岩波が文庫に編集し直して出版している。現在17刷だから根強い人気があるようだ。
自称「味覚人飛行物体」という変な肩書をもつ。東京農大名誉教授。こと食・発酵に関する限り、右に出る人はあるまい。
この人の食論? は、外国伝来であれ固有のものであれ、日本人はとことんまで食を極め、文化にまで高める、という見解である。
一例をあげれば大豆―。豆乳、豆腐、油揚げは大陸伝来だが、それをさらに深化させて味噌、醤油を生み出した。そこには麹(こうじ)菌を増殖させてたんぱく質からアミノ酸を溶出させ、さらに酵母や乳酸菌で発酵させるという我が国独自の技を繰り出し、嗜好品を作り上げた。
大豆を原料とする醤油、味噌によって食の幅を広げ、刺身、卵かけご飯、鰻丼、にぎり寿司、漬物の漬け床まで考案する。納豆にしても、大陸とは異なる微生物を利用して、独自の大豆文化に高めた。
佃煮も、徳川家康が摂津・佃村から招いた漁民を佃島に住まわせ、高級魚は武家に、大衆魚や取れ過ぎた魚は醤油や味醂を使って佃煮や開きなど保存食にということで誕生した。江戸詰めの武士が土産として地方に持ち帰った佃煮や開きは、それぞれ地元に根を下ろして、今日の土産文化となっている。
書けばきりがないが、微生物を巧みに利用した漬物、鰹節、日本酒、焼酎などは日本食を最高度に極めたもの。また魚食文化の多様性も、醤油を媒介として花ひらいたようだ。
本との出合いは縁だと思う。この本も、書店で著者の名前を目にしたのが縁で我が家にやってきた。いい本に出合うとうれしくなる。